スクランブル

スクランブル

スクランブル

今日は高校時代の文芸部の仲間の結婚式。久しぶりに顔をそろえた彼女たちが思い出すのは、十七歳だったころの自分、そしてあの事件。十五年前、彼女たちの通っていた名門女子校で発生した殺人事件で、殺されたのは同じ十七歳の女の子。犯人は結局捕まらなかった。彼女の命を絶ったのは誰なのか?十五年の歳月を経て明かされる事件の真相は…。

このお話はミステリーですが、その要素よりもむしろ「青春小説」みたいな要素の方が私には印象に残りました。今思い返せはちょっと恥ずかしいようなあの頃の記憶、そして胸の奥の痛み。これを読んだらみんなきっと自分の十七歳のころとダブるはず…。やさしくなったり、残酷になったり、反発したり。生意気で自意識過剰で偏屈でどうしようもなくて、でも笑っちゃうくらい一生懸命生きている十七歳の姿が、鮮やかに描かれています。このほろ苦さ…うまい!見事!制服の重さまでよみがえってきそうでした。

傷つけられることにも、一つだけ利点がある。それは、傷ついたひとの気持ちがわかるようになるということだ。

でもさ、どんなに傷ついても、知っているってことは、無知に対する武器になるんだ。

物語の中の各章のタイトルになっているのは、こんな単語たちです。「スクランブル」「ボイルド」「サニーサイドアップ」「ココット」「フライド」「オムレット」。全部卵料理の名前です。十七歳は本当にたくさんの可能性を秘めています。それはまさに「卵」。強くて、でも脆くて、どんなふうにでもなれる「卵」です。将来どんな料理になるのか、それは自分しだい。読み終わって、ステキなタイトルだなぁとしみじみ思いました。