クレヨン王国茶色の学校

アトピーに悩む6年生の女の子、玉絵。アトピーに効くといううわさの温泉で治療するため、百歳おばの家に叔父の桂さんといっしょにお世話になっています。そこは、オチバクライという土の神様とホルトダヌキという人間にも化けることができるタヌキの伝説の里でした。一見のどかなこの村に、「茶色の学校」の廃校をめぐってくりひろげられる騒動。学校を守りたい玉絵が、ある日迷い込んだクレヨン王国でオチバクライと交わした約束は…。

美しい自然と、それをとりまく「金儲け」に目がくらんだ人々。そんなくらい部分をもちながらも、この物語はどこまでも明るく、きもちよくつづられていきます。読んでいると、どんどん目の前に鮮やかな色彩の景色が展開していくような、そんな気持ちよさです。

「茶色の学校」を守るためにがんばる玉絵、そんな彼女にしのびよる魔の手。「きたない」大人たちの陰謀…。悲しい気持ちになります。こんなことが、今現在もどこかで起こっているのかもしれません。否定できない、そんな悲しさです。私たちが、なくしてしまったもの、今まさになくそうとしてしまっているもの。ほんとうに、それでいいのですか?と、何度も問いかけられている気分になりました。

Part1の表紙の絵をみて、「あ!クリの葉っぱだ!」と思っていたのですが、物語にもちゃんと立派にクリの木が出てきたのでうれしくなりました。うちの庭にもクリの木があります。うちのクリの木もこんなふうに「生かして」あげられているのかな?と、そんなことを思いました。