すべての雲は銀の…

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)

「誰もが抱える傷なのに 痛くてたまらない。」

帯に書かれていたそんな言葉につられて買った本です。

はっきり言うと、主人公である裕介がこれでもかというくらいにへこんでいる状態が延々と描かれている作品です。もうショックで、ショックで、つらい、つらい、つらい、というのがとても伝わってきます。立ち直らなきゃ、でもできない。ご飯が食べられない。体重が落ちる。この彼の弱りっぷりに、私はものすごく「そう!わかる!」と思ってしまいました。たとえば、彼が由美子(元彼女)が兄と笑顔で過ごしている場面や、兄に抱かれている場面を想像して苦しさを感じる場面。そんなこと考えなければいいのに、でも考えてしまう。二人の笑顔が頭のなかをぐるぐる回る。苦しい、苦しい…。そんな彼の気持ちが、痛いほどよくわかりました。共感って、こういうことをいうのかな…。

こんなこと、こんな苦しみや悲しみというのは、きっとごくごくありふれたものですよね。「誰もが抱えている」こと。失恋なんて、星の数ほど存在しているんですよね。自分もその中の一人。そうわかっていて、でも、つらい。それを繰り返して、強くなっていきもするのでしょうか。それでもその真ん中にいるときは、そんな言葉だってなんの気休めにもならない。こんな風に、主人公の彼みたいに、なんとか、なんとか、なんとか、乗り越えていくしかないのかなと思います。

この本は、買ってからずいぶんたちますが、それでもつい何度も手にとってしまう本です。同じような気持ちを抱えている人が読んで、ちょっとでも気持ちが軽くなったらいいなと思います。