トキオ

トキオ

トキオ

病院のベットの上で、今まさにその生涯を終えようとしている少年、時夫。それを見守る父、拓実は、そばにいる妻に語り始めます。「自分は昔、時夫と会ったことがあるんだ」と…。
定職につくこともなく、すべてをまわりのせいにして生きているような、そんな生活をしていた拓実。そこに突如あらわれた少年は「トキオ」と名乗ります。自分のことをやたらとよく知っている「トキオ」に対し、最初はとまどう拓実でしたが、なぜか突き放せないものを感じていました。そんなとき、拓実のガールフレンドが行方不明になります。何か事件にまきこまれたらしいガールフレンドを救うため、そして、自らの出生の秘密を知るため、トキオと拓実は行動を開始します。

うーん。東野さんの小説はほんとうにバラエティーに富んでいるというか。これはファンタジー?というのでしょうか。題名からはまったく想像できないストーリーでした。いい意味で裏切られたというか。設定こそファンタジーですが、中身は全然「ファンタジー」ではありません。トキオが「自分が未来から来た息子だ」っていつ言うのかしら、言ったら拓実は信じてくれるのかしら。でもそんなこと急に言われても困るよね…。信じてくれなかったらどうしよう。などと勝手に心配しつつ、どきどきして、もっと早く先が読みたくなって、一気に読んでしまいました。今まで東野さんの作品では『片思い』がダントツで好きで、次が『秘密』だったのですが、この『トキオ』も同じくらい大好きになりました。

ストーリーがおもしろいだけではなく、親が子を想う気持ち、子が親を想う気持ち、人が人を想う気持ち。そんなものがとても切なく心にせまってきます。

最後は涙、涙ですが、それでも明るい気持ちにさせてくれる物語でした。 切ないけれど、悲しくはないのです。
花やしき」に行かねば…!