優しい音楽

優しい音楽

優しい音楽

表題作の「優しい音楽」のほかに「タイムラグ」「がらくた効果」が収録されています。

そんなわけで、それぞれのお話にそれほど分量がありません。そのせいなのかどうか、ちょっと物足りなかったような…。書ききれていない感じがしてしまいました。「優しい音楽」の家族の人々の「苦しみ」とか「葛藤」とか、「タイムラグ」の主人公の「憂鬱」とか「怒り」とか(こんなこと許されない!私なら激怒だ!そしてお金も容赦なく使う!)、そういうものが全然伝わってこなくて、なんだかみんなのんきそうで、それはよかったですね…だけで終わりみたいな感じ。「やさしく」書きすぎというか。(そこが狙いなのでしょうか…?)登場人物の誰一人好きになれない、感情移入できないで、とまどっている間に物語が終わってしまって、あれ?みたいな。3つのうち、どれか一つをきっちりかいて1冊にしたほうがよかったのではないかなぁ。

今までの瀬尾さんの作品は全て読んでますが、それに比べるとこれはちょっと…と思ってしまいました。「帯負け」の感すらあり。(←なんだかえらくステキなことが書いてあったのです。)キライなわけじゃないのですが、いい!と思う部分ももちろんたくさんあるのですが、ただ期待しすぎたというか…。

ただ、最後の「がらくた効果」に出てくる、箱根駅伝の話はちょっと心に残りました。あの「繰上げスタート」という制度が私は大嫌いで、いつも見るたびに「あとちょっと待ってあげたっていいじゃん!」と思って涙していたのですが、これを読んだらそんな自分が間違っていたような気がしてきました。行きたくなくても、それでも行かなきゃいけないことがある。スタートしないといけないことがある。その上で、見えてくるものが、感じられるものが、きっとある。そうか、そういうものですよね。

というわけで、「がらくた効果」が一番好きでした。(それでも登場人物が誰一人好きな感じでなかったことが悲しい…。こんなヘンな女の人、わたしならダメです。)

ただ、読みやすいことは間違いなく、「惜しい!」ですがキライなわけではないので、何も考えずに読んでのんびり幸せな気分になりたいときにはよいかなぁと思いました。(余計なこといろいろ考えるからいけないのです、きっと。)