袋小路の男

袋小路の男

袋小路の男

表題作の「袋小路の男」は高校時代に出会ったひとつ年上の「あなた」を、ずっと想い続ける「私」の物語です。ずっともずっと、12年間です。

この物語が「純愛物語」と言われるのは、指一本触れずに想い続けたからなのではなくて、こんなふうに、理由も(だって愛もなければ金もないんですよ!)、駆け引きもなくて、それでも相手を想うこと、それこそがまさに「純愛」(純愛という単語はキライなので他になにか思いつくといいのですが。)だからなんだなぁと感じました。なんだかうらやましい。私にはきっとできない…。

そして次に収録されているのが「小田切孝の言い分」。まったく別の短編かと思って読み始めたら、「袋小路の男」の「男」が小田切さんでした。最初は「袋小路の男」が完璧だったからこれはいらない…と思っていたのですが、読み終えてこれがあってよかった!と思いました。「袋小路の男」の「あなた」はなんだかあまり好きじゃなかったのですが、この物語で小田切さんを知ったらとても好きになれたからです。特に何がいい男というわけでもないのですが、いや、どちらかというとダメ男ですが、それでもなんだか…いいのです。

「袋小路の男」では、「私」こと大谷さんの一人称で物語が語られていきますが、「小田切孝の言い分」の方では、二人のそれぞれの視点から気持ちがつづられていきます。

あいつは当たり前だと思ってるんだろうけど、俺が待ち合わせのとき、時間通りに行くのは大谷の時だけだぜ。

なんだか胸がきゅんとしました。なんだ、幸せじゃん!大谷さん!「しっかり喧嘩して、ちゃんと仲直りして仲良くやろうな。」ですよ。最高じゃないですか。ほんとうに。二人はこれからもこのままずっと、このままでいてほしい。心からそう思いました。

こんな奇妙な関係だって、全然幸せ。「恋人未満家族以上」とか、そんなふうに定義する必要もきっとなくて。男と女って、いろいろだなぁ…。

一緒に収録されている「アーリオ オーリオ」も好きでした。だって星が好きだし…私。