コイノカオリ

コイノカオリ

コイノカオリ

以前に読んだ「ナナイロノコイ」の第二弾、みたいなものかなぁと思って読みました。いろいろな作家さんのオムニバスものです。収録作品は以下の通り。

 角田光代「水曜日の恋人」
 島本理生「最後の教室」
 栗田有起「泣きっつらにハニー」
 生田紗代「海のなかには夜」
 宮下奈都「日をつなぐ」
 井上荒野「犬と椎茸」

一番のお気に入りはやっぱり栗田さんの「泣きっつらにハニー」。このタイトルからして好み…。父の工場が倒産。父の代わりに張り切って働こうとした兄は交通事故で入院。「史上最高に貧乏」になってしまった一家のために、高校生ながらも働かざるをえなくなった繭子は、マッサージルーム「蜜の味」で修行をはじめますが…というお話。悲惨な状況なのにどこか飄々とした繭子。いい!あいかわらず「栗田節」(←勝手に名づけてみました。)も健在で、よかったです。この人の書くものがもっと読みたいなぁ…。

角田さんの「水曜日の恋人」もなかなか。主人公は十三歳の女の子、真帆。毎週水曜日、カルチャースクールに通う真帆を送り迎えする母と、なぜかいつもそこにいるイワナさん。イワナさんは母の恋人だという…というびっくりな設定。子供って、大人が思ってる以上に大人だし、いろんなことをわかってるものなんですよね。きっと。シャンプーのエピソードがとてもよかったです。そしてなにより舞台がみんな自分の知っている場所だったことにびっくり。東神奈川のスケートリンクも、ダイヤモンド地下街の喫茶店も、東白楽のボーリング場も、全部、それこそ中学生のときにもよく行ったなぁ…と、なんだか自分が中学生になったような気分で読みました。

生田さんの「夜のなかには海」は、「好きなんだけどどうしても苦手」な先輩と付き合っている女の子の話。こういう感情を扱う恋愛小説ってなかなかないなぁというのに感心しました。わかる、ような、わからない、ような…。物語の中に「ナウシカに出てくる巨神兵」の話がでてくるのですが、「そういや昔いたなぁ。小学校の図工の時間に、ねんどで巨神兵作って、胴の部分へこませて『ちゅどーん!』とか言ってた男子。」というところで、「それはナウシカじゃなくてラピュタ…だよねぇ?」と思ってしまい、こんなどうでもいいところでひっかかってなんだか気もそぞろに読んでしまったのが残念でした(笑)。ところで、ラピュタの彼も巨神兵って言うんでしたっけ…??(まだひっかかっている私。)

宮下さんの「日をつなぐ」は、中学校で出会って、結婚した夫婦のお話。中学時代のエピソードのほほえましさと、現在の夫婦生活の現実感の対比がなんだか恐ろしく…。終わり方はさらに恐ろしく…(この後どうなっちゃうんですかー!)。そういう意味ではとてもよかったのですが、この人の書く食べ物はおいしそうじゃないなぁ…というどうでもいい感想も持ってしまいました。宮下さんの作品はこれが初めてだったのですが、他の作品も読んでみたいなぁと思いました。

苦手な感じだったのは、島本さんの「最後の教室」。この方も初めて読んだ作家さんなのですが、なんか、嘘くさいというか…。主人公の男の人がなんか。あまり伝わってこなかったです。(すいません。)

そして、井上さんの「犬と椎茸」は、最後に収められているだけあって、なんだか異色です。主人公がだいぶ年配なのです。(他の作品はみんな若い人が主人公でした。)昔、婚約者を奪われ、結婚されてしまった主人公。現在は違う人と結婚し、家族をもって生活していますが、そこへ、彼を奪った当人から連絡があり…。うーん。こんな風に後悔を残して過去の恋愛にしばられるような生き方は、私はしたくないなぁと思いました。今の旦那さん、いい人みたいだし、お子さんも立派だし、どうか現在の幸せに気づいて、そのまま今後は幸せに生きていってください…と思わず祈ってしまいました。

【追記】そして、全編「香り」がモチーフになっていたということに、今日(読んでから3日後)気づきました!そうか、だからこういうタイトル…。(←バカ。)