ニシノユキヒコの恋と冒険
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11/26
- メディア: 単行本
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「ニシノユキヒコ」を通り過ぎた、たくさんの女性たちが語る物語です。どうして彼と出会い、彼に惹かれ、彼と過ごし、そして離れたかを、彼女たちは語ります。
「ニシノさん」「西野君」「ユキヒコ」「幸彦」「西野くん」「ニシノ」「ニシノくん」「西野さん」。いろんな時代のニシノユキヒコを、彼女たちは様々に呼びます。そして、彼女たちの話の中で、彼は時に中学生であったり、時に五十歳を過ぎていたり、あるいはすでに死んでいたりします。
ニシノユキヒコはなんというか「旅人」です。愛の旅人…?彼を「なめらかにうわの空」と評した女性がでてきましたが、まさにそんな感じだと思いました。彼は旅人だけど、でも自分がどこにたどり着きたいのかもわからなかったんじゃないのかな…。
この前読んだ三浦しをんさんの「私が語りはじめた彼は」とちょっと構成は似ています。でも「私が…」の方は「事実はひとつだが、真実はそれを語る人の数だけある」ということを書いている(と私は思った)のに対して、こっちでは「これだけの真実から語られるニシノユキヒコ自身」を描こうとしている(と私は思った)のが違うところかなぁと。何人もの女性がニシノユキヒコのことを語りますが、その女性たちの違いとか個性みたいなものよりも、「彼女たちがとらえたニシノユキヒコ感」みたいのに重点が置かれている印象でした。(みなさん確かにタイプも年齢も違う方なんですけれどね。)ニシノユキヒコ自身が語る言葉もたくさん出てきますし。そこを書きたかったのかなと感じました。
しかし…ダメな男だ!ニシノユキヒコ!彼女たちがいかに強く、そして優しかったのかということを、彼はしっかり心に刻むべきだと思います。可哀相な人?(でも幼い頃に悲しいことがあって、それがトラウマだなんて、それは言い訳です!)なのかもしれないですけど…だからといって何をしてもいいというわけではありません!よ!そして、女ってバカだなぁ…。
これを読んだ男の人がどう思うのか、ぜひ聞いてみたい気がしました。