宇宙のみなしご

宇宙のみなしご

宇宙のみなしご

中学二年生の陽子と一つ年下のリンは仲良し姉弟。子どものころからいろんな遊びを工夫してきた二人が、新しく考え出した遊びは「屋根のぼり」。夜中にいろんな家の屋根にこっそりのぼる。見つかったら大変!このスリル満点の秘密の遊び。二人の秘密だったはずのその遊びですが…?

切なくて、あったかくて、とてもステキな物語でした。「屋根のぼり」私もやったなぁ…でも小心者なので他人の家の屋根にはのぼりませんでしたが(笑)。それでも、あの夜の匂いや、透明な空気や、空が近くなった感じや、わくわくしてでも心細いようなあの気持ち、ちょっと思い出しました。

「いじめ」や「登校拒否」や、そんなこともこの物語にはでてきます。でも彼らは、そこから決して逃げようとしていません。あたりまえのように、ただ受け入れて、いや、受け入れるなんて考えずに、ただ自然に、精一杯生きているだけです。悩んで、でも自分で考えて、自分で決めて。自分の足でちゃんと立ってます。なんというか、大げさに深刻に考えてしまう自分が拍子抜けしていまうくらいまっすぐに向き合って生きていて、その様子は読んでいてすがすがしくさえもありました。この子たちの方がよっぽど大人です。自分がちょっと恥ずかしくなりました。

陽子とリンの仲良しの大人、さおりさんの、こんなセリフにずきっとしました。

友だちのことでなやんだりするのって、学生の特権みたいなとこあるもんね。社会に出るとさ、なやみごとっていうのも仕事のこととか、お金のこととか、まぁ恋愛問題とか、結婚したらしたで相手の身内のこととか…。あとは自分自身かな。ほとんど自分自身のことでなやんでるのかな。純粋に友だちのことでなやむなんてこと、めったになくなっていくもんだから。

あまりにもそのとおりで、ぐぅの音も出ません。

「大人も子どももだれだって、いちばんしんどいときは、ひとりで切りぬけるしかないんだ。」
「でも、ひとりでやっていかなきゃならないからこそ、ときどき手をつなぎあえる友だちを見つけなさい。」

どんな勉強よりも、大切なことを学んだ陽子たち。真夜中の屋根の上で、彼らがつないだ手のぬくもりは、きっと一生の宝物です。不屈の笑顔で、がんばれ宇宙のみなしごたち!