Q.O.L.

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母をなくしてから一人で暮らしていた龍哉の家に、大学二年のときから同居している光平とくるみ。ある日もうずっと会ってもいなかった龍哉の父が亡くなったという知らせが届きます。遺品として龍哉に残されたのは「車と拳銃」。北海道までそれを取りに行く龍哉に同行することを決めた光平とくるみですが、彼らが心に秘めていたそれぞれの思惑は…。

予備知識なしで読み始めたので、どんな展開になるのやらまったくわからず、でもぐいぐい進むストーリーにひっぱられて一気に読みました。最後は、こういうことかなぁと思っていたことが、あぁ、そういうこと!となって、そして予想通りかと思いきや、さらに!という感じでした。

もっとも、そういうミステリィ的なストーリー展開が、おもしろいはおもしろいのですが、特にうまい!というわけではありません。うまくでき過ぎている部分もあるのだろうし、ちょっと納得がいかない気持ちもあります。でもそういうウソくさい部分は置いておいても、私は好きでしたし、何かこう伝わってくるものがあったと思うのです。

過去を清算するというのは、きっとそんなに簡単なことではありません。

「殺すことより、許すことの方がはるかに難しくて、どうしたら許せるかを考えるために人間は生きている。許せなくてただ殺し合うばかりだったらとっくの昔に人間は死に絶えている。あなたも生きていきたいなら許すことを考えなさい。」

龍哉の母が彼に残したこんな言葉が胸に響きました。

そして「それを押し付ける気はさらさらないけど、悲しむ人間を見るのは辛いでしょう。私はあなたが殺されると悲しい。あなたが人を殺して、殺された周りの人が悲しむのを見ても悲しい。あなたは、私に悲しい思いをさせたいの?」という言葉。

お母さん、すばらしい人ですね…。私は自分の子供に(いないけど)こんなに大切なことをちゃんと教えてあげられるかなぁ…。人は一人で生きているのではなくて、自分の苦しみも、悲しみも、自分のもののようで、それだけではないということ。このお話は、忘れてしまいがちなそんなことを思い出させてもくれました。

あの人がいてくれるから、やっていける。そんな仲間に出会えた彼らをちょっぴりうらやましく思いつつ…これからの彼らの人生に幸あれ!