神様がくれた指

神様がくれた指

神様がくれた指

スリで逮捕され、出所してきたばかりの辻牧夫。電車の中で少年少女らのスリグループの犯行を目撃した彼は、彼らを捕まえようとしますが逃げられてしまい、逆にひどい怪我をさせられてしまいます。怪我のせいで意識朦朧としていた辻を助けたのは、占い師の昼間薫。警察も病院もいやだという辻を、昼間が自分の家まで連れてきたことから、彼らの奇妙な共同生活がはじまります。スリグループをつかまえようとする辻、一人の占い客に妙に心ひかれる昼間。出会うはずのなかったはずの二人が出会ったことで、事件は思わぬ展開をみせ…。

どんどん展開するストーリー、そして事件。先が気になって気になってどきどきして、結構読み応えのある分量でしたが、一気に読みました。おもしろおかしいようで、シリアス。軽妙なようで、それだけでない。読み終わって心にずっしりきました。人が生きていく姿…。

私は、基本的に「犯罪を犯す人」について、どうしてそんなことをしちゃうんだろう、なんでそんなふうに育っちゃったんだろう、わかんないなぁ…と単純に思っていたクチなのですが、この本を読んで、なんだかいろいろ考えてしまいました。わかったなんていうのはおこがましいけれど、生まれとか、育ちとか、本人には選べなかった何か。ただ単に「本人が悪い」とか「甘えてる」とかでは済まない何か。そういうものが哀しくて、心に重かったです。

ちょっとだけ納得がいかないのは登場する「女性」二人かな…。咲と永井の、どちらにもいらいらさせられました(笑)。男の人が書く「女性」にいらいらさせられることは多々あるのですが、女性の方が書く「女性」にもいらいらすることがあるんだなぁと。あなたたち、もうちょっとしっかりしなさい!

でも、そう思ってしまうくらい、「人」がしっかり書き込まれているということで、佐藤さんはさすがだと思いました。どの登場人物にも思い入れができてしまうのです。「敵役」すら憎みきれないんですから困っちゃいます。

そんなわけでこのラストは、納得がいくような、いかないような…。だって彼が〜。いや、でも、うーん…。もやもや。
とりあえず、明日からカバンをしっかり持って電車に乗ることを心がけます(笑)